少し重い決算書のお話

日興コーディアルグループが米シティグループに買収されたという記事をほぼ毎日というくらい新聞で見かけます。事の発端は日興の粉飾決算の発覚です。
証券市場において証券会社というのは学校の先生みたいなもんです。決算書を通信簿、生徒だけでなく先生にも通信簿があると仮定します。証券会社が粉飾したことがどれだけよくないことかというと、先生が自分の悪い通信簿を校長先生にそのまま見せて怒られるのを怖がって、よく見えるようにいじったのと同くらいです。先生がそんなことをしちゃったら、生徒はぐれちゃいます。最近の新興市場はぐれています!
決算書をざっくり説明すると、P/L(損益計算書)とB/S(貸借対照表)から構成されています。P/Lは一年間の収益から費用を引いたものです。B/Sはその一年間の最後の日時点の資産、負債、純資産から企業の経営状態を表すものです。
私は、仕事を通して中小企業の決算書を見る機会がたくさんあります。決算書を見て金融機関は融資の可否を判断し、決算書を元に算出された数字から企業は税金を支払います。一見、ただの数字の羅列ですが、その数字を構成しているのは、経営者であり従業員、つまり人です。人がモノをつくり、モノやサービスを販売し、その過程や結果が決算書に凝縮されるのです。マクドのスマイルはメニュー欄では0円と表示されていますが、決算書には必ず反映しているのです。
決算書とはすごく神聖なものだと思います。血と汗が滲んでいます。しかし、ときに企業は決算書を粉飾します。ステークホルダーの期待を裏切りたくない、金融機関からの借入をストップされたくないとの理由から利益を水増ししようとしたり、逆に税金を支払いたくないために利益を圧縮したりします。
これまでたくさんの決算書を見てきましたが、そのほとんどを穴が空くほど見て、ほとんど覚えています。それが、決算書を見せて頂いたことに対する私なりの作法だと思っています。
決算書を見るとその企業の業績がわかるのと同時に、その企業の性格とか雰囲気とか悩みとかが見えることがあります。それで、社長に対し、私なりの感想を述べたり、偉そうにレクチャーしたりすると結構よろこんでくれたりします。中小企業の社長は工場長兼務や営業部長兼務みたいな人が多いですし、経理の人も伝票を整理して、「はい税理士さん、後はお願いしますね!」って人が多いので会社の内部に自分とこの決算書の内容を知っている人がいないことがあるんです。おおげさにいうと、「通信簿の5と1ってどっちがいいんだっけ?」って感じでしょうか。よって、いい税理士さんに出会えるかどうかってのは企業の成長や存続にとってかなり重要なポイントなんです。知り合いだからとか、昔からあの税理士さんだからとか、ウチは一度つきあったらころころ変えないのが自慢なんだ!とかって決め方はよくありません。経営者は従業員の家族をも養っているんだ!くらいの責任感と緊張感を持って、シビアな判断でいい税理士さんと出会って欲しいものです。
決算書を見ただけでは私には粉飾は判断できませんが、社長との会話+決算書なら、粉飾している場合は必ず矛盾が生じますので、ほぼ判断できます。粉飾は悪ですが、粉飾をした企業が悪とは言い切れないこともあります。(罪を憎んで人を憎まずみたいな感じでしょうか)中小企業の社長と経理だけでは、粉飾はまずできません。税理士さんが、指示しているか、見て見ぬふりをしているかのどちらかです。
某社長に税理士の変更について熱弁し、社長にキレられたことがあります。「何様のつもりや!」ってね。しかし、私の言ったことは間違っていない(営業マンとしては間違っています)と今でも思っています。
会社の規模が大きくなるほど、ステークホルダーの数は増えますので、決算書の重要性は増します。
某大手IT企業は粉飾決算の件で社長と財務担当者が罪の擦り付け合いをしていましたが、事の重大性を認識して欲しいものです。株主、従業員、取引先の従業員などの人生にもたらした悪影響は計り知れません。

いっとき、FPとかいう人が、(ちなみに私もFPといえばFPです)家計の決算書を作りましょう!とかって雑誌で特集組んだりしてるのを見かけました。
貯金→流動資産 車、家→固定資産 住宅ローン→負債として、B/Sをつくると、中流家庭のサラリーマンの人は大抵の人は債務超過(企業の場合負債が多すぎて、実質的に倒産の危機にある状態)になります。家の価値は下がることが多いので、評価損が生じることと、住宅ローンは元利金等方式が多いので、始めは利息が多く、借入金の返済が少ないので資産は減るけど、負債は減らない状態が続くことからそうなります。
債務超過を解消しましょう!とかってやってますが、収入を増やすか生活費を削るかしかありません。そんなこと誰でも知っています。いちいちそんなの作る時間が無駄です。債務超過でいいんです。そんなことから家庭は崩壊しませんので。
今回はうだうだ重いことを書いてしまいましたが、実は次回のネタへの前ふりです。乞うご期待